症状 
2018.01.22

更年期だけじゃない!女性ホルモンの低下がまねく危険な症状

女性の皆さまの体調に欠かせない女性ホルモンの分泌が、年齢と共に徐々に減っていくことはご存知の通り。女性ホルモンが減少していくと、めまいやイライラ、頭痛、ほてり、不眠など、いわゆる「更年期障害」の症状に悩まされる方もいますね。しかし、それだけではないのです。

最近の研究では、女性ホルモンの低下により、もっと恐ろしい症状や病気が現れ始めることがわかってきたのです。
失って困る女性ホルモンの役割とは? 年齢を重ねても維持し続けることはできるの? 気になる女性ホルモン低下について解説していただきます。

Q1.女性ホルモンの役割・働きについて教えてください。

卵巣から分泌される女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがありますが、今回はエストロゲンの方に焦点を当てましょう。閉経や卵巣摘出などに伴って急激に減少したエストロゲンが、体に大きな影響をもたらすためです。

成人女性におけるエストロゲンのはたらきには、次のようなものがあります。

1.子宮内膜を増殖させ妊娠の準備や妊娠の維持を担います。

2.乳腺の細胞を増殖させます。

3.骨を破壊する細胞のはたらきを抑え、骨密度を維持します。

4.肝臓において悪玉コレステロールの合成を減らしたり、血管周囲の細胞が悪玉コレステロールを取り込むよう促したりして、血液中の悪玉コレステロールを低下させます(参照1)。

5.血管を拡げる一酸化窒素の産生を促したり、血管が厚くなるのを防いだりして、動脈硬化を防ぎます(参照1)。

6.インスリンのはたらきを高め、血糖値上昇を防ぎます。

7.記憶を維持したり、記憶を引き出したり、判断したりする脳の機能を活発にさせます(参照2)。

8.神経伝達物質の調節により、自律神経のはたらきを保ちます。

Q2.閉経後に女性を悩ませる様々な病気や症状について教えてください。

閉経後は卵巣から分泌されるエストロゲンの量が急激に低下します。エストロゲンが担っていたはたらきが失われ、次のようなことが起こります。

1. 骨密度の低下

悪化すれば骨粗鬆症になります。影響は高齢になるほど大きく、特に大腿骨頸部や大腿骨転子部の骨折が起きた場合、寝たきりのきっかけにもなります。

2. 悪玉コレステロール増加と動脈硬化による心血管疾患や脳血管疾患

動脈硬化は閉経前から少しずつ進み、閉経後には血管の病気の発症が急に増えます(参照1)。

3. のぼせ、発汗、めまいなどの自律神経症状

エストロゲン分泌低下に伴い、神経伝達物質であるセロトニンやカテコールアミンという物質の量に変化が生じ、自律神経症状が現れます(参照3)。エストロゲンの量が少ないほど、これらの症状が起きやすいといわれています(参照4)。

4. イライラ、憂うつ、不安などの精神症状

エストロゲンの急激な低下に伴い、免疫担当細胞や血管内皮細胞からIL-6、IL-8、TNF-αという物質が多くつくられるようになります(参照5)。これらが脳に影響を与え、抑うつや不安、苛立ちなどの精神症状を強くしますが、骨粗鬆症や動脈硬化と異なり、閉経後5年以内に症状が落ち着く傾向にあります。

5. 認知機能の低下

記憶を引き出したり判断したりする認知機能が低下することがあります。ある研究で認知機能テストを実施したところ、エストロゲン分泌量が低下した女性では、そうでない女性と比較してミスが多いという結果が得られました(参照2)。

Q3.男性は、元々女性ホルモンが少ないと思うのですが、 女性の閉経後に起こるような病気や症状が慢性的に見られないのはなぜですか?

症状は、エストロゲン分泌量の低さと、その減少のスピードに応じて現れます。

閉経前、月経周期に伴い、エストロゲンの一種であるエストラジオールの血液中濃度は10-400pg/mLの広い範囲を上下しています。ところが、閉経を境にエストラジオールはほとんど分泌されなくなり、10pg/mL以下となります(参照6)。この急激な変化により体への影響が大きくなるのです。

そして実は、男性の体内でもエストロゲンは分泌されており、どの年代でもエストラジオールの血液中濃度は10-50pg/mLを保っています。つまり、50代半ばを超えると、女性よりも男性のほうが女性ホルモンを多く分泌しているということになります。したがって男性では、エストロゲン分泌低下による症状は起きないのです。

ただし、男性にも女性同様、更年期障害はあります。50歳前後から男性ホルモンの分泌がゆっくりと低下することによって、筋力低下、疲れやすさ、抑うつ、不眠、性機能低下などの症状が現れることがあるのです。

Q4.年齢を重ねても女性ホルモンを維持し続けたり、閉経後に気をつけることなどがありましたら教えてください。

閉経は生理的な変化であり、卵巣から分泌されるエストロゲンの急激な低下をコントロールする方法はありません。むしろ、閉経が遅くエストロゲンにさらされている期間が長い場合や、更年期障害の治療目的でエストロゲン補充療法を行った場合などには、乳癌や子宮体癌のリスクが増しますので、この意味においてはエストロゲン分泌量の低下に逆らうべきではないのです。

以下に、閉経に伴うエストロゲン低下による疾病を予防するために気をつけたいことを挙げましょう。

1. 軽い運動を習慣化する

動脈硬化や骨粗鬆症を予防するだけでなく、苛立ちや不安などの精神症状も軽減します。閉経後に継続する運動としては、次のような軽いレベルでかまいません(参照7)。

・やや速めに歩くこととゆっくり歩くことを交互に繰り返して散歩をする。
・エレベーターではなく階段を使う。
・初心者向けフィットネス教室に通う。

2. 1日15分間、日に当たる

紫外線は皮膚癌や白内障の原因になるなど、悪い面が強調されがちですが、骨密度を保つために必要なビタミンDを体内で合成するときに必要になります。

3. 魚の摂取を増やす

上述のとおり、免疫担当細胞や血管内皮細胞から分泌されるIL-6、IL-8、TNF-αという物質が脳に影響を与え、抑うつ、不安、苛立ちなどの精神症状をきたしますが、これらの物質が過剰につくられないようにしてくれるのが、魚の脂です(参照8)。動脈硬化の予防にもなりますので、マグロ、サバ、イワシなどを積極的に摂取しましょう。

4. 大豆製品は摂取するべきか?

大豆に含まれるイソフラボンやその代謝物エクオールは、エストロゲンに類似した作用を持つとされています。これらが更年期にみられる心身の症状を抑えるのではないかという研究が数多く行われてきました。精神症状や骨密度低下の改善については一致した見解がありませんが、のぼせの軽減、悪玉コレステロールの減少、動脈硬化の予防には効果がありますので、毎日の食事に取り入れるのが望ましいでしょう(参照9)(参照10)。

 

【参照資料】
(参照1) 日本生殖内分泌学会雑誌2013:18:11-15
(参照2) Horm Behav.2014:66(4):602–618
(参照3) J Med Dent Sci. 2011:58(2):49-59
(参照4) Maturitas.2010:66(3):285-290
(参照5) Journal of Reproductive Immunology.2007:1:56-62
(参照6) 日本産婦人科学会雑誌.2009:7:N238-242
(参照7) Medicine & Science in Sports & Exercise: February.2017:49(2):254–264
(参照8) Menopause.2011:18(3):279–284
(参照9) Menopause.2011:18(7):732-53
(参照10) Am J Clin Nutr.2014:100:Suppl.1:423S-30S

監修

内科医: 吉田 菜穂子