コレステロール  病気  脂質 
2018.01.29

女性の方がなぜ多い?脂質異常症の男女差について

「脂質異常症」という言葉をご存知でしょうか。

普段、あまり聞きなれない病気ですが、LDLコレステロールが必要以上に増えることで気がつかないうちに血管が傷つけられ、静かに動脈硬化が進行し、そのまま脳や心臓の怖い疾患につながるおそれがある、とても怖い症状です。
厚生労働省が3年ごとに行っている「患者調査」では、男性に対して女性の「脂質異常症」の人数が高いことが判ります。なぜなのでしょうか。女性に多い理由と予防・改善策を教えていただきます。

Q1.脂質異常症という言葉が聞きなれないのですがどういう病気ですか。詳しく教えてください。

脂質異常症とは、血液中の脂質濃度が基準から外れた状態をいいます。具体的には次の場合を指します。

・血清LDLコレステロール 140mg/dL以上
・血清中性脂肪(トリグリセリド) 150 mg/dL以上
・血清HDLコレステロール 40mg/dL未満

これまで「高脂血症」といわれてきたものは、LDLコレステロールや中性脂肪の増加に焦点を当てたものでしたが、HDLコレステロールの減少の問題が明らかである現在、脂質異常症と呼ぶようになっています。

Q2.メタボリックシンドロームとの違いを教えてください。

脂質異常症はメタボリックシンドロームの一部分であると考えて下さい。メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪が蓄積していると予測され、かつ動脈硬化性の病気を引き起こしやすい要素を抱えている状態を指します。Q1で挙げた脂質異常症のうち、中性脂肪の増加やHDLコレステロールの減少は、メタボリックシンドロームの診断基準に含まれています。

俗に「悪玉コレステロール」と呼ばれるLDLコレステロールの増加は、メタボリックシンドロームの診断基準には含まれていません。それは、肥満・血圧高値・血糖値高値・喫煙などといったメタボリックシンドロームの要素を持つか持たないかにかかわらず、「悪玉度の非常に高いLDLコレステロール」を多く持つ場合は、これのみで動脈硬化を促すことがわかっているためです。

LDLコレステロールの中にも、実は、「悪玉度の低いLDLコレステロール」と「悪玉度の非常に高いLDLコレステロール」が混在しています。後者は、スモールデンス(小粒子高密度)LDLコレステロールと呼ばれます。LDLコレステロールが高くてもスモールデンスLDLコレステロールを少ししか含まない人もいれば、逆にLDLコレステロールが低くてもスモールデンスLDLコレステロールを多く持つ人もいるのです。一般的には、血糖や血中性脂肪が高い場合には、スモールデンスLDLコレステロールが多くなるとされています。

Q3.脂質異常症になる原因を教えてください。また、女性に多いとされるのはなぜですか。

脂質異常症の原因は、それぞれ次のとおりです。

(1)LDLコレステロールが高くなる原因
遺伝的体質、飽和脂肪酸の過剰摂取、コレステロールの過剰摂取、トランス脂肪酸の過剰摂取

(2)中性脂肪が高くなる原因
遺伝的体質、運動不足、アルコールの過剰摂取、高カロリー食、炭水化物の過剰摂取

(3)HDLコレステロールが低くなる原因
遺伝的体質、喫煙、運動不足、肥満

 

脂質異常症が女性に多い理由は2つ考えられます。

(1)閉経後の女性ではLDLコレステロールが上昇する
女性ホルモンには、2つの経路でLDLコレステロールを減少させる作用があります。閉経後は、このはたらきが低下するため、LDLコレステロールが著しく増加するのです。ある調査によると、閉経前の女性のLDLコレステロール平均値は100mg/dLですが、閉経後の女性のそれは163 mg/dLまで上昇しています(参照1)。

(2)40歳以上の女性では中性脂肪が上昇する
一方、中性脂肪の方は、閉経前より上昇し始めますが、やはり閉経後に急激に上昇するケースが多く、ある調査によると、閉経前の女性の中性脂肪平均値は92mg/dLですが、閉経後の女性のそれは125 mg/dLまで増加します(参照1)。当然ながら基準値を超える人も増えていくのです。中性脂肪増加の背景としては、体重増加や運動不足が挙げられます。

Q4.脂質異常症の予防策と診断されたときの改善策があれば教えてください。

(1)LDLコレステロールを正常化するために

・大豆、野菜、果物、海藻、きのこ類の摂取を増やす
・飽和脂肪酸を多く含むもの(肉類)を食べ過ぎない
・コレステロールを多く含むもの(魚卵・鶏卵・しらす干し・レバーなど)を食べすぎない
・トランス脂肪酸を多く含むもの(マーガリンやショートニングなど人工的な油脂を含んだ食品)を避ける

(2)中性脂肪を正常化するために

・有酸素運動を習慣化する
・アルコール摂取は適量とする(男性はビール500mlまたは日本酒1合まで、女性は男性の2/3程度まで)
・背の青い魚を毎日摂取する
・えごま油やアマニ油を摂取する
・炭水化物を取り過ぎない
・適正体重を維持する

(3)HDLコレステロールを正常化するために

・禁煙する
・有酸素運動を習慣化する
・適正体重を維持する

 

 

 

(参照1)日本産婦人科学会雑誌.2009(10).N520-527

監修

内科医: 吉田 菜穂子